[マイルール・偏食・一番病]自閉症のこだわりとうまく付き合う方法3選

事例・体験談

あらゆる場で必要な見とおし

今回は自閉症スペクトラムの特性としてよく見られる「こだわり」について考えていきます。自閉症の子どもは、特定の物や数字、場所、マイルール、順番などにこだわりがあることが多いです。たとえば、ものの並べ方にこだわりを見せる子は、おもちゃを一列に並べ続けたり、順番にこだわる子は、1番にならないと気持ちが乱れてしまったりすることがあります。変化が苦手で、いつもと同じだと安心することから、こだわり行動を見せるという可能性もあります。

こうしたこだわりへの対応には、これまでの記事でも触れてきたとおり見とおしを立てること。今回も、とても重要なポイントになります。見とおしを立てることで、マイルールなどのこだわりから切り替えやすくなるのです。

小学4年生のJくんは電車や時刻表に興味があり、電車を利用した遠足では、自分の目で駅の時刻表を確認しないと気が済みません。そして集団の輪から離れ、1人でホームの時刻表まで見に行くと、乗り換えや行き方を考え始め、その方法で目的地へ向かいたくなってしまいます。それからは、あらかじめ電車の時間や乗り換えを細かく伝えるようにしましたが、それでも実際に時刻表を確認したい気持ちは強いまま。今度は時刻表を印刷したものを見せて説明しました。その結果、実際に目で見て確認すると安心したようで、集団から外れずに行動できるようになりました。

子どもが苦手なものはなにか?

次に苦手を取り除くことで、こだわりを減らすことが期待できます。小学1年生のKくんは偏食があり、特定のものしか食べられませんでした。自閉症の子どもの偏食は珍しくなく、特定のものに偏ってしまうことはよく知られています。そんなKくんは炭水化物しか食べられませんでした。こうした偏食の対応には、苦手な要素を取り除いて対応すること。舌触りが苦手な場合は滑らかにすり潰す、衣などのサクサク食感が苦手な場合は、湿らせてしっとりさせるなど、苦手な要素を取り除き、少量から慣らしていく方法です。

Kくんの場合は炭水化物以外は、全般的に受け付けなかったため、少量のふりかけや海苔をご飯に乗せるところから始めました。初めはご飯に少しついているだけで泣いて食べられませんでしたが、事前に伝え、見て慣れるようになったら舐めてみるなどと段階を踏むことで、徐々にふりかけおにぎりや、海苔のあるおにぎりも食べられるようになりました。まだまだ偏食が改善されたわけではありませんが、Kくんにとっては大きな一歩となりました。

負けたときの気持ちのコントロールを学ぶ

そして、こだわりの困りごとでよく挙げられるのは「一番病」とも呼ばれる、勝ち負けや順番へのこだわりです。並ぶときは1番前、毎回ゲームで勝ちたいといった気持ちが強く、そうならなかったときには癇癪を起こしてしまいます。

私が関わってきた子どもたちのなかにも、勝敗や順番にこだわる子が多くいました。これはすぐに受け入れられるようになるわけではなく、時間が必要です。しかし、今後も勝敗や順位がつく場面は多くあるため、根気強く向き合うことが大切です。勝ちたいという気持ちは、決して悪いことではありません。そのため負けたときの気持ちのコントロールを学んでいく必要があります。

癇癪を起こしたときには「気持ちの切り替え」の記事にもあったように、過剰な声かけは不要。落ち着いて話せるようになったときに「勝ちたかったんだね」と、子どもの気持ちに寄り添います。そして、1番になれないことがあること、負ける日もあることを伝えていきます。これは繰り返し伝えることで、少しずつ変化が見られるでしょう。癇癪の時間が短くなる、その場を離れるだけで落ち着く、泣いてもその場に留まれるなど、少しずつ変化が見られていくと思います。

こうした小さな変化でもたくさん褒め、我慢ができるようになった経験を増やしていくことで、負けたことを受け入れられるようになっていくのです。また、ゲームは勝ち負けだけでなく、楽しめるものだということも、同時に伝えていくとよいと思います。

集団の場ではトラブルに発展しやすいイメージのあるこだわりですが、実は大きな強みでもあります。興味をもつと高い集中力を発揮し、特定の分野を極める力があります。こだわりと上手に向き合いながら長所は伸ばし、短所としてのこだわりは少しずつ減らしていけますように。

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