気持ちと行動の不一致に苦しむ子ども。ADHD症状の事例

事例・体験談

暴力を振るった自分に涙

前回はADHD「注意欠陥・多動性障害」の概要について紹介しました。今回は、わたしが接してきた子どもたちのADHDの症状を紹介します。

~小学1年生C君~
明るく人懐っこい性格。ADHDの順番を守れないといった症状とは相反して、正義感が強く、決まりを守ることにこだわる子どもでした。しかし、ルールを破ったり、意地悪をしたりしている友だちを見ると、衝動的に暴力を振るってしまいます。そうして周りからは「怖い存在」と誤解されていきました。ただ、彼は決して友だちを痛めつけたいわけではなく、自分でもわからないうちに手が出てしまうのです。その後、暴力を振るったことに心を痛めて泣いている姿から、彼の本当のやさしさや、自分との戦いに苦しんでいることが伝わってきました。

思っていない言葉で傷つける

~小学2年生D君~
甘えん坊でお調子者の性格。しかし、素直に気持ちを表現できず、奇声を発したり、LEGOなどの製作品を壊したりするなど、周りを威嚇するような態度をとります。また、彼には汚言症の症状があります。汚言症とはトゥレット症におけるチック症状の一種。社会的に受け入れられないような不適切や、汚い言葉を無意識に発してしまう症状です。彼も自分の意志に反して「死ね」「うんこ」といった言葉を発し、友だちがつられて笑ってしまうことで、周りにも注意が及んでいました。彼はきちんと場の空気を読めます。しかし、静かにしなければならない環境に置かれる程、余計に汚言症の症状が出てしまうのです。

たとえば、映画館の模擬体験授業を行った際、普段より汚言を発していました。しかし、周りの友だちが映画を見て笑うと「静かにするべき場でうるさくしている」と感じ、暴力を振るってしまいます。その場の空気を人一倍意識しているからこそとった行動のように感じました。
トゥレット症については、改めて別の記事で紹介します。

たのしいことは限界が見えない

~小学3年生E君~
やさしく穏やかな性格。彼には友だちも多いのですが、授業や指示の聞き漏れ、忘れ物といった不注意が多くありました。また、自分が作業をせずに話を聞く場面では5分も集中力がもたず、その後はぼーっとして自分の名前を呼ばれても気づかないことすらあります。一方、たのしくなると周りが見えなくなり、大声で笑ったり雑談したりするなど、注意されるまで気づきません。

彼はのんびりした性格や不注意が多いことから、遊びも都合よく展開されてしまいます。たとえばボードゲーム・カードゲームなど順番に行うゲームでは、ぼーっとしていて、自分の番を飛ばされてしまうのです。知らない間に、友だちが有利なルールが設定されていても言い出せず、1人で泣いていることがありました。

ADHDの子どもには、物事に集中できる環境づくりのため、注意を逸らしてしまう要因となる刺激を減らすこと(不要物の設置、座席配置の工夫など)が重要とされていますが、医学的な治療が必要な場合もあります。薬物療法により穏やかになったり、気が散りにくくなったりしたといった改善傾向も見られますが、その分食欲減退、頭痛、腹痛、吐き気、目眩などの副作用も伴います。医師との相談のうえ、それぞれの症状に合わせて、慎重な決断が必要です。

今後は彼らの発達課題に対して取り組んだ内容、成長過程などについて紹介していきます。

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