少しの配慮で暮らしやすい世界を。「合理的配慮」

基礎知識

合理的配慮とは?

前回の「認知特性」の記事でもお伝えしたとおり、私たち大人は、子どもの個性や特性、得手不得手などを理解し、環境を整えることで、彼らは過ごしやすくなり、学習の伸びも期待できます。

こうしてそれぞれの特性や困りごとに配慮することを「合理的配慮」といいます。合理的配慮は、障がいの有無によって分け隔てられることなく、人格や個性を尊重し保証されるための配慮のことです。

小・中学校で取り組まれている事例

2016年4月に施行された「障害者差別解消法」により、合理的配慮を可能な限り提供することが、学校や企業、行政にも求められるようになりました。小・中学校における合理的配慮の例としては、以下が挙げられます。

・教員、支援員のなど確保
・施設、設備等の整備
・個別の教育計画や指導計画に対応した柔軟な過程の編成や教材などの配慮

具体的には…
・一人ひとりに応じた教材など(ICT機器の利用)を活用
・個別学習や情緒安定のための小部屋を用意
・口頭での指示だけでなく、板書などによる視覚での情報掲示
・廊下などに物を置かないようにし、安全環境を整備(視覚不自由児に対応)

また、これまで教育現場では人手不足により、十分な配慮が行き届いていないという声もあり、平成19年4月には「特別支援教育支援員制度」が始まりました。小中学校に在籍する発達課題の子どもたちを適切に支援するための措置です。

これにより、特別支援教育支援員が配置できるようになり、普通級に在籍していても、個別での指導や見守りなどの対応が可能になりました。この特別支援教育支援員とは、小・中学校に在籍している特別な配慮が必要な児童・生徒に対して、校内及び校外活動において、学習面や行動面の支援を行う有償ボランティアのことです。

少しの配慮で見えた改善傾向

以前、保護者の方から聞いた話ですが、ある児童は給食でにんじんが出ると癇癪(かんしゃく)を起こしていたそうです。担任の先生が細かく刻んであげると、少しずつ食べられるようになり、放課後まで引きずっていた癇癪(かんしゃく)も起こらなくなっていったとそうです。

これは配慮が必要な子どもの人数によっては、普通級で担任1人が行うには難しかったかもしれません。こうして小さな配慮を支援員が行うことで、子どもが穏やかに過ごせるようになることもあります。初めは補助をすることで方法を示し、最終的には1人でも穏やかに食べられることをめざします。

一方で、子どもへの配慮が必要だと感じながらも、個別対応を受けることに不安を感じる保護者もいました。当時、その地域は支援員制度を活用するために、子どもの実名を学校外の機関に提出する必要があったといいます。

実名が他の保護者に知れることはなくても、どこかで不利益になることはないか、個別対応を受けることで、他の子の目にどのように映るのか気になってしまうという不安があったようです。

不安を感じている点は、解消できるまでとことん話を聞き、その子にとってよりよい方法を見つけてほしいと思います。もしかしたら個別対応を、他の子どもに理解してもらうには時間がかかるかもしれません。配慮が必要な人がいること、少しの配慮で過ごしやすくなる人たちがいることを理解し合える世界が訪れることを願っています。

【参考】合理的配慮の提供等事例集:障害者制度改革担当室 – 内閣府
    資料3:合理的配慮について:文部科学省

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