単なる運動オンチじゃないかも?「感覚統合」能力をチェック

基礎知識

学校行事ではなく運動が苦手だった?

以前、学校行事に苦手意識をもつ子どもについて取り上げましたが、そのなかでも運動会が苦手のように見えて、実は単に運動自体に苦手意識をもっている場合もあります。発達課題のある子どもは、比較的に運動が苦手なことが多いといわれています。その理由として「感覚統合」が重要なポイント。今回は運動面だけでなく、日常生活やコミュニケーションなど、さまざまな場面で影響のある感覚統合について考えていきます。

まず「感覚統合」とは、視覚や聴覚など脳に入ってくる、さまざまな感覚情報を取捨選択し、整理する能力のこと。私たちの脳は、普段この情報整理を自然と行っているため適応行動をとりますが、うまく整理できないと日常生活でつまずきが生じます。

たとえば落ち着きがない、集中力がないなどの態度面をはじめ、水面を叩く、なんでも匂いを嗅ぎたがるといった感覚面。また、遊具やボールなどの道具を使った遊びが苦手、動作模倣が苦手といった全身運動面。他にも生活面や社会性に影響があります。

広く知られていない感覚の種類

そもそも感覚とは、一般的に五感といわれる視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚のほかに、無自覚の感覚もあります。それは触覚(表在感覚)、固有覚(深部感覚)平衡感覚(前庭覚)の3つ。

まず、触覚については意識しづらいものも含まれています。たとえば目を閉じた状態で紙とゴムなどの異なる素材の物に触れたとき、簡単に識別できます。しかし、軽く触れた場合や、触れる部分が極わずかとなると、その識別は困難になります。

次に固有覚とは、筋肉や関節など身体の奥から生じる感覚のこと。筋肉に生じている張力や、関節の角度や動きを感知します。たとえば目を閉じたまま、手の平に1冊の本を置かれていたとします。次に5冊の本を置かれたとき、本が増えたことに気がつけるのは、固有覚が働いているからです。この感覚統合がうまく行われていないと、筋肉の力の入れ加減が難しくなり、ゆっくりとものを置くなどの動作ができず、ものの扱いが乱暴だと受け取られてしまいます。

最後の平衡感覚は、バランス感覚のこと。私たちは無意識のうちに、筋緊張を上げ下げして姿勢を調節しています。目を閉じた状態で、身体を左右に傾けられると、頭を垂直方向に起こそうとします。それは地球の引力のズレを感じとり、首の筋緊張を変化させ、身体の傾きとは逆方向に頭を傾けて、垂直に保とうとするからです。この筋緊張の情報整理がうまく行えないと姿勢が保てず、机に突っ伏したり、椅子から落ちてしまったりすることもあります。また、棒上りや鉄棒も困難になります。

平衡(バランス)感覚の養い方

また、平衡感覚は眼球運動の回路と密接な関係にあります。たとえば10回転ほど回った後には、10数秒間、眼振が見られます。この持続時間が短すぎても、長すぎても情報整理のトラブルが疑われます。多動や自閉症の子どもは、眼振の出づらいケースが多く、くるくる回った後もまっすぐ走れることがあります。一方でこういった子どもたちは、動いているものを目で追うことが苦手です。注視や追視することが苦手で、キャッチボールなどが困難になりますこうしたものの見え方の問題の背景には、平衡感覚の情報整理の問題を抱えている可能性があります。ブランコや平衡感覚系の遊びを多く取り入れていくうちに、眼球運動の発達を促しやすくなります。

このように日常生活や運動、コミュニケーションなど、さまざまな場面でのつまずきには感覚統合が関係している可能性があります。 たとえば何度も鉄棒の練習をしても習得できない子どもに対しては、平衡感覚を養う遊びを多く取り入れ、効果が上がることがあるように、アプローチを変えてみる必要があるかもしれません。子どもの様子をよく観察し、つまずきの原因を理解することが重要です。

参考文献:育てにくい子にはわけがある : 感覚統合が教えてくれたもの

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