長所を伸ばして可能性を広げる。「自閉症スペクトラム」とは?

発達課題

自閉症スペクトラムの概要

今回は自閉症スペクトラムについて紹介します。
自閉症スペクトラムは、うまくコミュニケーションをとれない、さまざまな物事に対して強いこだわりをもつといった特徴のある発達障がい。これまで広汎性発達障がいや、自閉症などと呼ばれていましたが、現在は自閉症スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)と、まとめて表現されるようになりました。

主に言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たないなど、言語やコミュニケーションにおける障がいが認められています。乳児期早期は視線を合わせたり、身振りを真似したりするといった他者への関心が薄く、社会性が低い傾向があります。その後、学童期に入っても感情を共有することが苦手です。周囲への関わり方が一方的で、対人関係を築くのが難しくなります。また、興味・関心が限定的で、強いこだわりをもっています。

さらに、外部からの刺激を過敏・鈍麻に感じる特徴も認められています。過敏とは過度に敏感なこと、鈍麻とは感覚がにぶいこと。自身の体調の変化に気づかず重症化する恐れがあります。人によって症状や程度は異なり、あらゆる感覚機能に症状が現れます。たとえば掃除機の吸引音など、特定の音に反応する聴覚過敏、タグが苦手で洋服が着られない、マスクがつけられない接触過敏、光の刺激を過剰に受け本の文字がゆがんで見える視覚過敏などがあります。また、五感以外の感覚機能に問題が生じることもあります。その他の主な症状は以下のとおり。

・視線が合わない
・同じ動作を繰り返す
・こだわりが強い
・一人遊びがすき

医師から自閉症スペクトラムと診断される条件

自閉症スペクトラムは、アメリカの精神医学会のマニュアルに沿って、以下の条件をすべて満たしたときに診断されます。

1.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
2.行動、興味または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さなど)
3.発達早期から1,2の症状が存在していること
4.発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
5.これらの障害が知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと

「精神医学会(APA)のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」)」より

長所を伸ばすことで可能性は広がる

自閉症スペクトラムを発症する人は100人に1人の割合で存在し、男性は女性の4倍ほど多いと報告されています。また、約70%以上の人が1つの精神疾患、40%以上の人が2つ以上の精神疾患を併存しているといわれています。特に知的障がいが多く、ほかにもADHD、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障がい、学習障がい(LD)などがあります。

遺伝が関与する先天性の脳機能障がいや、妊娠期間中の胎内環境、周産期トラブルなどが関係していると考える説がありますが、未だ原因は特定されていません。そのため、医学的治療法も確立されていません。(癇癪(かんしゃく)やこだわり、多動などの個人的な症状は薬によって軽減する場合があります)。

ただ、苦手なことは多い一方、特定の物事に関しては興味や知識が豊富で、とことん極める力があります。ある自閉症の女性は、なにをするにも丁寧でしたが、スピードを求められる仕事は不向きだでした。しかし、ホテル清掃の仕事を始めると、隅々まで丁寧に掃除してくれると評価されていました。こうして長所を伸ばすことで可能性は広がります。

また、過敏な感覚機能は共存していけることも多くあります。聴覚過敏については、イヤーマフラーやイヤホンをして音を遮断する、接触過敏については、洋服のタグを縫い目からとるなど、刺激となる原因を取り除きましょう。現在はコロナウイルスの影響によりマスクの着用が欠かせない状況ですが、苦手な子どもに対してはフェイスシールドに切り替える方法もあります。それぞれの特性を正しく理解し、個々の発達ペースに合わせた療育や教育が必要です。

【参考】自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省)

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